ナチスだったか何だったか忘れましたが、拷問しようとする人間を、電話ボックスよりももっと狭い箱の中にずっと入れておいたという話を聞いたことがあります。
しゃがんだり、座ったりすることもできず、その人はずっと立っていなければならないので、徐々に膝が痛くなります。人間の痛みの中で、もっとも耐え難い痛みの一つが、膝の痛みだというのです。  
年をとってくると、関節の表面を覆っている軟骨が磨り減ってきます。
クッションで覆われた棒で叩かれても痛くない場合でも、むき出しの金槌で叩かれると痛いように、
骨と骨とが直にゴリゴリと擦れ合うような格好になり、痛みや腫れが出やすくなります。  
レントゲン写真を撮ると、軟骨の部分は写真に写らないため、
骨と骨との間の隙間となって見えてきます。
若者の正常な膝だと、大腿骨側に4mm、脛骨側に4mmで合計8mmの隙間が見えるのですが、
高齢になってくると、この隙間が狭くなってきます。  
残念ながら、一度磨り減ってしまった軟骨は、ほとんど再生しないとも言われています。
大事に使うしかないのです。
膝の安定性のために重要な大腿四頭筋を強化し、肥満にならないように気をつけます。
O脚のひどい人には、足の裏に装具をつけることも、膝にかかる負担を軽減するためにいい方法です。  
最近、軟骨の構成成分のヒアルロン酸を関節の中に注入する治療が、多くの施設で行われるようになり、効果も得られています。それではこの注射によって、実際に軟骨が増えるか、レントゲン写真で隙間が広がるかというと、なかなかそうはいきません。  
ヒアルロン酸の効果の効果を説明するときに、私自身は、「傷んで表面がデコボコになった関節の表面を、コーティングするんでしょうかねえ」と言うことにしています。